起立性調節障害の鍼灸治療

起立性調節障害の鍼灸治療

 起立性調節障害は、思春期の児童に起こりがちな疾患で、起床時の体調が悪いため不登校になってしまうこともあります、治療は原因である自律神経失調を治すことが大切です。

起立性調節障害の症状

 簡単に説明すると、下半身に循環している血液を、うまく上半身に循環させる事ができないため
脳への血流が少なくなり、下記のような症状を訴えます。

  •  立ちくらみ めまい
  •  軽い運動で動悸がする(よって体育の授業は見学する児童が多い)
  •  起床時の体調が悪くなかなか起きられないので学校を休みたがる(特に午前中が調子悪く、夕方から就寝前までは体調が良い)
  •  精神的ストレスに敏感である(体調の悪さに反抗期と重なることによって)
  •  食欲不振(特に朝は食べられない)
  •  疲れやすい
  •  頭痛 腹痛 顔色が悪い
  •  自動車やバスなど乗り物に酔いやすい
  •  その他、肩こり、目の疲れなど様々な不定愁訴

 

 このような症状があり、他に器質的疾患がない場合、起立試験にて「起立性調節障害」と判断されます。

 重症の場合は、何もしていなくても頭痛 腹痛がひどく、それにからだ全体のだるさが加わり 普通に生活することが困難で一日中ベッドから出られないようなケースもあります。

起立性調節障害の考察ー原因

 起立性調節障害の患者さんは女子中学生に多く、起床時に体調が悪く、お腹が痛い、頭痛や からだのあちこちが痛い、などと言うために最初は、学校に行きたくないための怠け病と思いがちです。
 しかし、本人にとっては非常につらい状態なのです。

 

 一人っ子の場合が多く、保護者(母親)が世話をしすぎるような家庭が多いようです。

 このような患者さんたちは、病院にて起立性調節障害と診断され、薬物治療や生活習慣の改善 などを指導されるのですが、益々症状が悪化するために当院に来院されます。

 

 病院で処方される血圧上昇薬などは、副作用で頭痛がひどくなることもありますし、場合によっては、抗不安剤、睡眠導入剤など脳に作用する薬を処方されるケースもありますが、
これらは原因をなおすものではないので、症状が悪化すると次々と強い薬にかえられたり 量が増えたりして、
その結果起立性調節障害がなおりにくくなってしまうこともあります。

 

 また生活習慣の改善といっても、そもそも自律神経が失調して体のリズムが崩れていて体力も低下しているので、
時間で生活を強制しても、なかなか体がついてくるものではありません。

 

起立性調節障害の治療法

ではどの様にしたら起立性調節障害は治るのでしょうか

起立性調節障害の患者さんは、疲れやすいと訴えるのがひとつの特徴ですが、この年代で疲れやすいというのは異常なことです、新陳代謝が悪いため、なかなか疲労が回復しないのです。

 原因として考えられるのが自律神経の失調です、きっかけは学校や友人関係、家庭環境などでの精神的ストレスが多いのですが、これに体質的要素 が加わり起立性調節障害を発症してしまうのでしょう。
【甲状腺の機能に問題があったり、脊柱が側弯していたりなど、根本的な体質を治療することが重要です】

 

 病院で指導されるように、生活習慣の改善や運動は勿論大切なことですが、ある程度体調を整えてからでないと、かえってつらくなってしまいます。

 

 どの患者さんを診ても同じですが、血液循環が悪く代謝機能も低下しているために、からだ全体の筋肉が非常に硬くなっています。
これは自律神経の失調により、血管や体の各器官を緊張させる交感神経が働きすぎているためで、起床時の体調不良、動悸、乗り物酔い、疲れやすい、食欲不振などは、すべて自律神経失調の症状です。

 したがって基本的な治療法は自律神経失調症と同じなのでそちらのページをご覧ください。

 

 それと大事なのが、学校、友人関係、家庭環境におけるストレスに対するカウンセリングです。
(起立性調節障害の患者さんは、これらの悩みが必ずあります)

 この様に、自律神経を整え体力をある程度回復しながら就寝時間を改善させていき生活のリズムを作っていきます。

 

 次に朝食をしっかり食べる事も重要です、最初は体調が悪いため少ししか食べられませんが 自律神経の改善とともに食べられるようになります、三食しっかり食べ血糖値を安定させることは
新陳代謝を向上させる事につながります。

 

 それと、もうひとつ注意してほしいのが糖分の摂りすぎです。
疲労回復に糖分がよいからと、お菓子や飲料(ジュース、砂糖入りのコーヒーや紅茶など)を
一日に何杯も飲むようですと糖分が過剰になってしまいます。

 たとえば、6グラムのスティックシュガーを2本入れたコーヒーを一日5杯では、それだけで一日60グラムの摂取で、ひと月にすると1.8キロ、一年では21.6キロの砂糖を摂ることになります。

 糖分は一時的には疲労の回復になりますが、長期間の過剰摂取は、からだを砂糖漬けにしてしまい検査の数字に出ていなくても、糖尿病と同じようなからだになってしまうのです。
ご存知のように糖尿病は代謝機能が低下するために、他の病気にかかったり怪我をするとこれらを治すのに非常に時間がかかります。

 

 日常的な糖分の過剰摂取は、からだを砂糖づけにしてしまいます。
血液中の糖分量を調節するインシュリンは膵臓から分泌されるのですが
この分泌が低下し血糖値があがってしまうのが糖尿病です、起立性調節障害の場合
これとは逆にインシュリンが分泌過剰となり、つねに低血糖状態になっていることもあります。
しかし、どちらにしても代謝機能の低下した、疲れやすい、回復しにくい、冷えやすいからだになってしまいます。
糖分を減らすだけでも代謝機能が向上し、血流の良い冷えないからだになりますので
糖分の摂取量を減らすよう是非心がけて下さい。

 

 そして運動ですが、始めは激しい息の切れるようなことは避け、できれば水泳やウォーキングなどの有酸素運動が良いでしょう、
それとよくお願いしているのが、勉強やパソコンの合間に壁や机に手をつき腕立て伏せをすることです。

(上腕や胸の筋肉を鍛え首の負担を減らすことは自律神経失調の改善にもなります)

 

まとめ

 このように起立性調節障害の治療は、

1.自律神経失調を治療し、からだの緊張を取り除き、
2.食事や運動にて代謝機能を向上させ、血液の循環を改善させることで、全体の体調を整え(血液循環がよくなれば、脳への血流量も増えるので立ちくらみ、めまい、頭痛は改善されます)
3.そのうえで生活習慣を改善しつつ糖分摂取を控え、

4.さらに筋力をつけ代謝機能の良いからだにしていけば
症状は必ず快方に向かいます。

子供さんの起立性調節障害で悩んでらっしゃるようでしたら、ご連絡ください。

 電話にて長々と質問を受ける場合があるのですが、治療中の患者さんに迷惑がかかりますので質問のみの電話はご遠慮ください。  

かめイラスト
おだいじにどうぞ

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